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お姫様の物語の楽しみ方

物語は、今のように誰もが読めるものではない。文字が読める階級がひと握りだった。手から手へ書き写されるため、暇とお金と物語作者に「コネ」のある人しか読めなかった。読者もまた貴族を中心とした人たちに限られてくるわけである。『源氏物語絵巻』には姫君が女房に髪を梳かさせながら、あるいは腹這いになりながら絵を眺め、それに付随した物語を読んでもらっている絵がある。いかにも優雅な光景で、物語が特権階級のものだったことがわかる。面白いのはお姫様は絵だけを見ているということ。当時のお姫様は、文字を読むなんて、かったるい作業は女房に任せ、綺麗な絵だけを寝っ転がって見るという、おいしいところどりをしていた。「活字離れ」といわれる咋今だが、文字を読むのが面倒なのは昔の人も同じこと。現代人ばかりが怠惰で見た目を気にし、昔の人がダサくて勤勉だったと思ったら大間違いなのである。ダサいどころか、絵巻の素材である『源氏物語』が生まれた平安中期など、女も男も現代日本人以上に、おしゃれと美容に命をかけていた。紫式部の日記には、同僚の着物の色から模様まで、しつこいほどレポートしてあるし、着物の柄がほかの人より劣る女房を、同僚がつつきあって笑ったと記されている。同じ時代の『栄花物語』には、賀茂祭を見物する藤原道長が、行列に参加する召使の少女を「美しければ褒め、それほどでもない者を笑いなどした」そんな様子が「とても面白く現代的なことだ」と評されている。この道長の娘で、一条天皇の中宮となった彰子は、紫式部の女主人としても有名だが、彼女は大変な美形好みで、生涯、美人女房を周りに仕えさせている暮らしぶりが「素晴らしく理想的なご様子だ」といわれた。美しいものとそうでないものを厳しく見分け、美を愛でることは、貴族の美徳だったのだ。美しくあることも、また大切なことだった。
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