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外科医の礼儀作法を1からやり直した思い出

当時の私は、医師としての「礼儀作法」がなっていなかった。そのせいで、医研修医時代には先輩だちからは当初しこたまお叱りを受けた。外科の躾は厳しく、まず、はじめに言葉使いから注意された。先輩に何かいわれたときは間髪を入れず即座に「ハイ」と答えなければならない。3年近くの留学生活で、少し。アメリカかぶれをしていたのか、あるいは一種の「時差ボケ」であったのか、日本の社会に溶け込むことが億劫になっていた。先輩たちの前でも敬意を怠り、「ハイ」という返事を忘れ、「ウン」というような返事を無意識にしていたのだ。そのたびに「返事の仕方に気をつけろ!」と怒鳴られた。あるときなどは本箱に寄りかかりながら先輩の話を聞いていて、「お前、人の話を聞いているときにその態度はなんだ!」と激怒されたことがある。いま、思っただけでも「冷や汗もの」なのだが、若僧だった私は、「軍隊じゃあるまいし、先輩だからってそんなに偉ぶる必要もないじゃないか……」と内心では、反抗的気分もあったにちがいない。しかし、そのような自分を。悔い改めることには、そう長い時間はかからなかったと思う。「外科医の世界では先輩の存在は絶対的で、先輩のいうことをよく聞くほど、外科医として早く成長できる」という事実にすぐ気がつき、納得したからである。従順な弟子として「顔を洗って」出直してみると、先輩たちの対応も一変し、いろいろな事を親身に教えてくれるようになった。外科医の修行は経験が全てである。その倫理観や価値観は職人的世界に近いところがあると私は思っている。しかし、我が「戦友たち」とは「友達感覚」で話していて、逆に親しみを感じていたから、そのようなすれ違いや衝突はなくてすんだ。彼女たちにとって、私は幾分滑稽な「アメリカ帰りのお兄ちゃん」として「おかしな奴」であったにちがいないだろう。