子どもの乳歯が抜けたとき、それが上の歯ならば縁の下に、下の歯ならば屋根の上に放り投げる風習がある。地方によっては、上の歯を屋根の上に投げ、下の歯を縁の下に投げるというところや、トイレの屋根に投げ、その屋根から雨だれの落ちる場所に埋めるところもある。これらはいずれも、抜けた歯のかわりに丈夫な永久歯が生えてきてほしいという願いをこめたものである。歯を放り投げるとき、「丈夫な歯にな〜れ」「ネズミの歯とかわれ」などと唱えることが多いが、屋根の上も縁の下も、そしてトイレの周辺も、ネズミがよく駆け回っている場所だ。抜けた歯をそこに投げるのは、何でもガリガリかじるネズミのような強い歯がほしいというおまじないの一種なのである。医学の発達していない時代には、一度虫歯になってしまうと、もう治せなかった。食物をよく噛める丈夫な歯が健康に欠かせないことは、民間にも知られていたのだろう。子どもに、よい永久歯が生えるよう願う親心は万国共通のようで、同じような風習が世界のあちこちで見られる。南太平洋の島では、「大ネズミ、小ネズミ、私の古い歯をあげるから、新しい歯をおくれ」といいながら、抜けた乳歯を屋根の上に投げる。欧米では、抜けた乳歯に塩を振りかけて暖炉で燃やす習慣も広く行なわれている。歯が燃えている間、よい歯が生えるように神様に祈るという。
[参考情報]
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