アーカイブ

ラットヘの超音波照射実験が発端となる

さまざまなダイエット法は、自己コントロールがむずかしく、科学的に怪しいものも少なくありませんが、やせたい部分だけやせることを望む人が多いことも事実です。従来はそのための決定的方法はないとされ、日本肥満学会も、部分やせは不可能だと表明してきました。しかし、以前から超音波による痩身の可能性に注目していた私は、その頃、某新聞の「肥満特集」で、愛媛大学医学部の教授(現・熊本県立大学環境り共生学部教授)が発表された脂肪分解のメカニズムの記事を見て、「これだ!」とひらめいて、さっそく教授に電話をかけ、私たちの研究にアドバイスをいただけないかとお願いしたのです。すると、その趣旨に賛同してくださった教授は自費で上京し、共同研究に参加していただけたのです。まず平成九年(一九九七)、東京慈恵医科大学総合医科学研究センターME研究室とホソダ電子の協力を得て、ヒトに超音波を照射する際の安全な周波数と強度範囲を決める試験を行いました。同センターの古幡博教授と進めたこの試験では、生理的な化学作用が予測される20kHz〜1MHzの範囲内で、六種の周波数の振動子と駆動回路を作り、米国製パワーメーターで強度を調整。ヒトの血液が溶血するか、ブタの脂肪組織が砕かれるかどうかの実験を行い、100kHz以下では溶血が起こることを確認しましたが、細胞は破砕されませんでした。以後二年間、木野正人研究員の協力を得て六回(各一週間)にわたってラットに超音波を照射し、ラットの血中の遊離脂肪酸の増見方を調べる実験を続けました。遊離脂肪酸は、脂肪が分解した時に生成される物質だからです。具体的には、10分間、超音波をラットの腹部に照射して、脂肪が分解した時に血液中に生成される遊離脂肪酸(FFA)の増加率を調査したのです。すると、特定の周波数(300〜800kHz)付近で、遊離脂肪酸が約二倍に増えることを確認しました。その強度の範囲内なら効果は同じで、それ以上でも以下でも効果はないことが分かりました。しかも、その広い強度範囲は、生体組織の透過中の吸収を考慮しても、体表から体内の深部までカバーできて、有効だということが分かってきたのです。