では、ここでもう一度、肥満の最大の問題点をおさらいしてみよう。肥満した人を外から観ると、ただ脂肪が多くついているだけの問題に思えるけれども、そうではない。最大の問題点は食欲の調整機構が悪い方向に働いていることにあり、脂肪が多くついたのはその結果なのだ。それがどれだけ大きな問題であるかは、血糖値と血中インスリン値を調べてみるとよくわかる。「左のグラフは肥満した大が食事をした後に示す血糖値と血中インスリン値の典型的な変化をトレースしたものだよ。それと対比して肥満していない人の例が示してある」「正常な範囲を超えた山と谷があるんだね」「うん、肥満している人はほとんど例外なく、インスリン抵抗があるから、インスリン値まで異常な山をつくっている」「インスリン抵抗があるから細胞がブドウ糖をとり込めないために糖もインスリンも血液中にだぶつくんだね」「糖が血液中にだぶつくと、それに対応してインスリンが過剰につくり出されることになり、時間的には血糖値の山に少し遅れてインスリンの山が出来る。この過剰のインスリンは肥満を改善するのとは正反対の、肥満を促進する方向に働くから、こういうグラフになっている人がカロリーをカットするだけのダイエットをしても成功しない」「そういう山をつくらない食事にしなくてはいけないわけね」「そうなんだよ。それにはどういう食事にしたらよいのかを、これまで話してきたのだが、このグラフのようにインスリンが過剰になって正常の範囲を超えているときに、血液中に正常の範囲を超えてだぶついているブドウ糖があると、それを脂肪に変えて体にたくわえようとする。つまり、正常の範囲からとび出している山の部分のブドウ糖が体脂肪に変わってしまうわけだ」「それじゃウェイト・ロスは不可能ね」「うん。しかもそれだけじゃないよ。過剰のインスリンは体が体脂肪を燃やしてエネルギーに変えるのを妨げる。燃やさないようにするし、燃やすスピードを遅らせる。だから、この二つの働きが組み合わされると非常にやっかいなことになる」「それは必ず組み合わされるんでしょう?」「そうなんだよ。いまは働きを分けていっただけで、実際はその二つの働きの複合された効果があらわれてくる。結果として糖を主燃料にした糖に依存する傾向が強まり、体は吸収した糖をより早く使おうとする。それが食欲を充進させる。よりひんぱんにより多量に食べる必要が生じ、それが食欲という指令となってあらわれてくるわけだ。この指令は体のメカニズムが出してくるのだから逆らうのはむずかしいというより不可能だよ。かんたんに意志の力で抑えられるものではない。原理的には長く呼吸を止めることができないのと同じだからね」「呼吸を止めるというのは呼吸をせよという指令に逆らっていることなの?」「そうなんだよ。生きていくうえで食べるというのは呼吸をするのと同じ重要性をもっているから、食べよという指令は同じ強固さを持っている。それに逆らって拒絶しつづけると食欲コントロールのメカニズムがこわれてしまう」「拒食症とか?」
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